I. はじめに
DeepSearchで行ったレポートを記事として掲載しています。
私の目で一度は全文を確認し、明らかに違う点は修正しておりますが、まだ間違った情報が含まれている可能性はございます。
提案などに関しては、あくまでも一つの意見、そして読み物として面白いという判断ですので、それを理解したうえでご覧いただければと思います。
by 編集長(tanossy)
A. Resoniteの概要と本レポートの目的
Resoniteは、Yellow Dog Man Studiosによって開発され、2023年10月に正式リリースされたソーシャルVRプラットフォームである。ユーザーによるコンテンツ制作の自由度と創造性を重視した設計思想を継承・発展させている点が大きな特徴と言える。本レポートは、Resoniteがアート作品を制作するクリエイターにとって、どのようなツールとなり得るのかを多角的に考察することを目的とする。具体的には、アート制作に関連する主要機能、実際の活用事例、クリエイター視点でのメリット・デメリット、そして将来性について論じる。なお、「Resoniteとは何か」という基本的な定義については、本レポートの対象外とする。
B. アートクリエイターにとってのResoniteの魅力の源泉
Resoniteがアートクリエイターを惹きつける根源は、その圧倒的な自由度、リアルタイムでのVR内制作、そして緊密なコラボレーション機能にある。特に、ビジュアルスクリプティングシステムである「ProtoFlux」は、プログラミング経験の浅いアーティストでもインタラクティブな要素や複雑なロジックを作品に組み込むことを可能にし、表現の幅を大きく広げる可能性を秘めている。これらの要素が複合的に作用し、Resoniteは従来の制作ツールとは一線を画す、新たな創作体験を提供し得るプラットフォームとして注目されている。
II. Resoniteの主要機能:アート制作の観点から
Resoniteは、アートクリエイターが自身のアイデアを具現化するための多様かつ強力な機能群を提供する。これらの機能を理解することは、Resoniteを創作ツールとして最大限に活用する上で不可欠である。
A. オブジェクトとワールドの構築・編集機能
Resoniteの核心的な特徴の一つは、仮想ワールド内のオブジェクトを極めて自由に操作、編集、保存できる点にある。ユーザーは、オブジェクトの位置、サイズ、回転などを直感的に変更でき、さらには自身のアバターサイズを変更して飛行したり、地形を自由に改変したりすることも可能である。気に入ったオブジェクトは複製し、自身のインベントリに保存することで、異なるワールドで再利用することができる。この柔軟性はワールド構築にも及び、開発者が提供する多彩なツールセットを活用し、リアルタイムで他のユーザーと協力しながら、ゲーム内でアイデアを形にすることが可能である。このダイレクトな編集能力は、試行錯誤を繰り返しながら作品を練り上げていくアート制作のプロセスと親和性が高い。
B. 3Dモデルのインポートと互換性
多くのアーティストは、BlenderやMayaといった外部の3Dモデリングソフトウェアで作成したアセットを自身の作品に取り込みたいと考える。Resoniteは、このようなニーズに応えるため、多様な3Dモデルフォーマットのインポートに対応している。具体的には、FBX、OBJ、GLBといった主要なファイル形式をサポートしており、これらのファイルをワールド内にドラッグ&ドロップするだけで簡単に導入できる。プラットフォームはオープンソースのライブラリを活用しており、これにより広範な互換性を実現している。このシームレスなインポート機能は、アーティストが既存のワークフローやアセットをResoniteのエコシステムに持ち込む際の障壁を大幅に低減させる。
C. ProtoFlux:ビジュアルスクリプティングによるインタラクティビティの実現
ProtoFluxは、Resoniteにおけるインタラクティブなコンテンツ制作の中核を担う、ノードベースのビジュアルスクリプティングシステムである。アーティストは、コードを直接記述することなく、ノードを視覚的に接続していくことで、アバターの挙動、ワールド内のギミック、複雑なゲームシステム、そしてダイナミックなアート作品を構築できる。ProtoFluxの大きな利点は、リアルタイムでのフィードバックと複数人での同時共同作業が可能である点だ。作成したプログラムはその場で即座に反映され、その様子は「魔法を使っているような感覚」と評されるほど直感的である。これにより、プログラミング未経験のクリエイターでも、遊びながら学習し、高度なインタラクションを作品に付加することが可能になる。ProtoFluxは、静的なアート作品を動的で応答性のある体験へと昇華させるための強力な触媒となる。
D. マテリアルとシェーダー
オブジェクトの視覚的な質感や光との相互作用を決定づけるのがマテリアルである。Resoniteには多種多様なマテリアルタイプが用意されており、それぞれのマテリアルは特定のシェーダーと、編集可能なプロパティリストを持っている。これらのプロパティを調整することで、アーティストはオブジェクトの外観を細かく制御できる。新しいマテリアルは、開発ツールやマテリアルツール、あるいはインスペクターから直接作成可能である。
しかしながら、現時点(2024年初頭)で、Resoniteはユーザーによるカスタムシェーダーの直接的な作成・導入をサポートしていない。この機能は、プラットフォームのレンダリングエンジンがカスタムソリューションに置き換えられた後に実装される計画であり、ロードマップ上には存在している。カスタムシェーダーの不在は、独自の視覚表現を追求するアーティストにとっては制約となり得る。ただし、既存のシェーダーをProtoFluxやコンポーネントと組み合わせたり、マテリアルスタッキングによって複数のメッシュレンダラーを重ね合わせたりすることで、多くの視覚効果を実現することは可能であるとされている。
E. アニメーションとパーティクルシステム
Resoniteは、動的な視覚表現のためのツールも提供する。TextureSheetAnimatorコンポーネントは、パーティクルのテクスチャをライフタイムや指定時間に応じてアニメーションさせる機能を持つ7。これは、Frooxiusによって作成されたPhoton Dustシステムの一部である。
さらに高度なアニメーションや複雑なパーティクルシステムは、ProtoFluxを活用することで実装可能である。ProtoFluxを用いることで、ワールド内の要素の位置、回転、スケールといったプロパティを時間経過やユーザーのインタラクションに応じて精密に制御できる。これにより、単純な動きだけでなく、複数の要素が連携する複雑なアニメーションシーケンスや、物理法則に基づいた自然な挙動、ユーザーの操作にリアルタイムで反応するインタラクティブなアニメーションなどを構築できる可能性がある。同様に、特定の条件(オブジェクトの衝突、音の発生など)に応じて粒子の発生数、速度、色、形状を動的に変化させるような、複雑なロジックに基づいたパーティクルシステムの構築も期待される。
F. VRおよびデスクトップモードでの操作性
ResoniteはVR環境での没入感の高い体験を重視しつつも、デスクトップモードでの操作性も考慮されている。基本的なインタラクションは、プライマリ(決定・インタラクト)、セカンダリ(オプション操作)、グラブ(掴む)といったアクションと、ダッシュメニュー(個人用)、コンテキストメニュー(共有可能)を通じて行われる。これらの操作はVRコントローラーとキーボード・マウスにそれぞれ割り当てられている。
特筆すべきはデスクトップモード専用の機能で、例えばF5キーによる一人称/三人称視点の切り替えは、ワールド全体の構成を把握したり、アバターの動きを客観的に確認したりする際に有用である。また、Ctrl+Z(元に戻す)、Ctrl+Y(やり直し)といった標準的なショートカットキーも利用可能であり、クリエイティブな作業の効率を高める。一部のクリエイティブな作業においては、デスクトップモードの方がVRモードよりも操作しやすい場合もあると指摘されている。さらに、VRヘッドセットを装着したままでも、コントローラーを置けば飲み物を取る程度の現実世界の動作が可能である点は、長時間の制作作業における細かな利便性向上に繋がる。
III. Resoniteを活用したアート作品事例
Resoniteの多機能性は、既に様々な形態のアート作品として結実している。以下に具体的な事例を挙げ、Resoniteがどのように芸術表現に貢献しているかを示す。
A. インタラクティブインスタレーション
Resoniteは、現実世界のアクションやユーザーの創造性をリアルタイムで仮想空間に反映させるインタラクティブなアート体験の創出に長けている。
- 「きらきらがっき -弾いた音が光に変わる魔法のピアノ-」: このプロジェクトでは、会場に設置された電子ピアノの演奏がMIDIを通じてResoniteのシステムに送られ、リアルタイムで音と光のエフェクトとしてメタバース空間に出現した。現実の演奏が仮想空間の視覚表現と即座に連動することで、演奏者と鑑賞者の双方に新たな体験を提供した。さらに、会場の様々な民族楽器や伝統楽器の音も調和するように調整され、空間全体が音と光に包まれる豊かな体験が設計された。これは、Resoniteのリアルタイムデータ連携能力と空間演出能力を示す好例である。
- 「おえかきようせい -自分の描いた絵が仮想世界で動き出す-」: 子どもたちが会場のiPadで描いたイラストが、Resoniteのギミックを通じてバーチャル幕別ホールで動き出すという体験型コンテンツである37。子どもたちの描画データがResonite内のオブジェクトとして認識され、アニメーションとして生命を吹き込まれる。仮想キャラクター「レちゃん」「ゾちゃん」とのインタラクションを通じて、子どもたちの創造性が直接的に仮想空間で表現されるこの試みは、Resoniteのインタラクティブなオブジェクト制御とキャラクターを通じたエンゲージメント設計能力を実証している。
これらの事例は、Resoniteが単なる3D空間提供プラットフォームではなく、現実と仮想、あるいはユーザーの創造的アクションとデジタル表現とを繋ぐインターフェースとして機能し得ることを示している。特に、リアルタイム性、インタラクティブ性、そして空間全体の調和を重視した設計が、ユニークなアート体験を生み出す上で重要な役割を果たしている。
B. ワールドアートと環境構築
Resoniteは、ユーザーが独自の仮想世界、すなわち「ワールドアート」を創造するためのキャンバスでもある。
- 「自分だけの宇宙ステーションが作れるワールド [MMC24] SMM SPACE CRAFT STAT…」: ユーザーがコンポーネントを組み合わせてオリジナルの宇宙ステーションを構築できるこのワールドは、Resoniteのモジュール性とカスタマイズ性を活かした環境構築の一例である。
- 「星空シミュレーター Starry Sky Simulator」: 美しい星空を再現するこのワールドは、Resoniteを用いた環境アートやシミュレーションの可能性を示唆している。
- 『百鬼夜行 -化猫譚- Tales of a Mystic Cat』: Metaverse Maker Competition 2024 (MMC24) のアート部門で最優秀賞を受賞したこのワールドは、チーム『Neo Extreme』(QVペン画家のGunberry氏、アニメーターのtomo氏、ビジュアルアーティストのTorazo氏、サウンドアーティストのku氏などが参加)によって制作された 。日本の伝統的な妖怪譚をテーマに、Torazo氏の絵画作品がワールド内の要素として取り入れられ、Gunberry氏の描く独自の世界観とtomo氏のアニメーションが見事に融合している 。物語性の高い体験型アート作品であり、そのクオリティはロンドンのインディーズ系映画祭「Raindance Immersive」にもノミネートされるほど評価されている 。Resonite内で描かれたアート、外部から持ち込まれたアート、そしてそれらを組み合わせた空間演出とインタラクティブな物語展開が特徴である 。
- 『四神伝 – Four Symbols』: Metaverse Maker Competition 2025 (MMC2025) のアート部門で佳作を受賞した作品で、チーム『neo extreme』によって制作された 。東アジアの伝説上の神獣である四神をテーマにした壮大なワールドアートである。
- 『鶴の恩返し』をテーマとしたアート作品: Resoniteの前身であるNeosVRで開催されたMetaverse Maker Competition 2023 (MMC2023) で展示された、日本の有名な民話「鶴の恩返し」をモチーフにしたアート作品 。物語の世界観をVR空間に表現した作品として注目された。
これらのワールドは、単に美しい景観を提示するだけでなく、ユーザーがその空間とインタラクトしたり、さらには空間自体を創造プロセスの一部として楽しんだりすることを可能にする。Resoniteの自由なオブジェクト編集機能やリアルタイム共同編集機能は、このような大規模で没入感のある環境アートの制作に適している。
C. アバターおよびデジタルアイテム制作
Resoniteは、アバターそのものや、アバターが身につけるアイテム、あるいはワールド内で使用するユニークなツールといったデジタルオブジェクトの制作プラットフォームとしても活用されている。
- VRアーティストGunberry氏制作「ディビデュアル羽(ウイング、大)」、VRoidスタイリスト マイナル氏制作「ディビデュアル角(ホーン)・羽(ウイング、小)」: これらは、特定のテーマ(コンテスト「ディビデュアル -分人新生-」)に沿って制作されたアバター用の装飾アイテムであり、Resonite内でのキャラクターカスタマイズの深化と、アーティストによる個性的な表現の場を提供している。
- 「バルタン星人のハサミ【Resonite】」、「VRで「笑い男」になるツール Resonite 攻殻機動隊SAC.」: これらは特定のIP(知的財産)をモチーフとしたファンメイドのアイテムであり、Resoniteの柔軟な制作環境が、ユーザーの創造性を刺激し、多様なデジタルアイテムを生み出す土壌となっていることを示している。
- 「アバターのおっぱいマウスパッドを作れるワールド 3Dマウスパッドショップ」: この事例は、よりニッチでユーモラスなアイテム制作もResonite内で行われていることを示しており、プラットフォームの表現の幅広さを物語っている。
これらの事例から、Resoniteは単にアバターを装着する場であるだけでなく、アバターや関連アイテムを創造し、共有し、さらにはそれらを通じて自己表現を行うための統合的な環境を提供していることがわかる。
D. イベントベースのアート展示
Resoniteは、アート作品を制作し、展示し、共有するためのプラットフォームとしても機能し、特にイベントを通じたコミュニティ形成と作品発表の場を提供している。
- UniFesta2024: これはResonite内で開催されるノンジャンルの展示会であり、特筆すべきは、出展物の制作から展示手続きまでの全てがResonite内で完結する点である。過去に制作された作品も対象となり、アイテム、ワールド、動画、パフォーマンスなど、あらゆる形態の創作物が出展可能である。参加費・出展費は無料で、モデラー、プログラマー、アーティスト、パフォーマーなど、多様なクリエイターが集う場となっている。
- Metaverse Maker Competition (MMC): Resonite(およびその前身であるNeosVR)で定期的に開催されている大規模なコンテンツ制作コンテストである 。1ヶ月程度の期間でチームまたは個人がワールドやアイテムを制作し、その成果を競う。前述の『百鬼夜行 -化猫譚- Tales of a Mystic Cat』や『四神伝 – Four Symbols』といった高品質なアート作品も、このMMCをきっかけに生み出されている 。MMCは、クリエイターが技術を磨き、共同作業を行い、そして自身の作品を広く発表するための重要な機会となっている。
UniFestaやMMCのようなイベントは、Resoniteが単なる個人的な創作空間に留まらず、クリエイターが自身の作品を広範なオーディエンスに届け、フィードバックを得て、他のクリエイターと交流するための活気あるエコシステムを形成しつつあることを示している。制作から発表までを同一プラットフォーム内でシームレスに行えるという特徴は、クリエイターにとって大きな魅力であり、創作活動のサイクルを加速させる可能性を秘めている。
IV. クリエイターにとってのメリット
Resoniteは、アートクリエイターに対して多くの利点を提供するプラットフォームである。その核となるのは、前例のないレベルの自由度、リアルタイムでの共同作業、そしてVR空間内での直感的な制作フローである。
A. 高い自由度と創造性の発揮
Resoniteの最大の魅力は、ユーザーに与えられる圧倒的な自由度である。オブジェクトの操作、編集、保存が自由に行え、ワールドの構築やアイテムの作成もプラットフォーム内で完結する。ユーザーは文字通り、ワールド内のほぼ全てのものを編集でき、アバターのスケールを自在に変更したり、空を飛んだり、地形をリアルタイムで変形させたりすることが可能である3。この制限の少なさが、クリエイターの固定観念を打ち破り、既存の枠にとらわれない斬新なアイデアや表現の探求を促す。結果として、Resoniteはクリエイターが自己の創造性を最大限に発揮し、ユニークなアート作品を生み出すための肥沃な土壌を提供する。
B. リアルタイム・コラボレーション制作
Resoniteは、複数人のクリエイターが同一のVR空間内で同時に、リアルタイムでコンテンツを制作できる強力なコラボレーション機能を備えている。アバターを介してコミュニケーションを取りながら、まるでゲームをしているかのようにワールドやアイテム、インタラクティブなシステムを共同で開発していくことが可能である。ProtoFluxを用いたプログラミング作業も複数人で同時に行え、その場で書いたプログラムが即座に反映される様子は、従来のVRコンテンツ開発と比較して効率が良く、魔法のような感覚と評される。このリアルタイム共同編集機能は、アートプロジェクトにおけるチームワークを円滑にし、多様なスキルを持つクリエイター間の相乗効果を生み出し、より複雑で洗練された作品の創出を加速させる。
C. 直感的なVR内制作ワークフロー
Resoniteは、制作プロセスの大部分をVR空間内で完結させることを可能にする。オブジェクトの配置や編集、マテリアルの調整、さらにはProtoFluxを用いたロジックの構築に至るまで、多くの作業をVRヘッドセットを装着したまま、直感的な3D空間認識を活かして行うことができる。これは、外部のゲームエンジン(例:Unity)でコンテンツを制作し、ビルドしてからVRで確認するという従来のワークフローとは対照的である。VR内での直接操作は、特に空間的な構成やインタラクションのデザインにおいて、試行錯誤のサイクルを短縮し、アーティストの意図をより忠実に作品に反映させることを助ける。この没入型の制作環境は、アーティストが「作る」行為と「体験する」行為をシームレスに往還することを可能にし、より深いレベルでの作品との対話を生み出す。
D. ProtoFluxによる高度なインタラクション実装
前述の通り、ProtoFluxはResoniteにおけるインタラクティビティの中核を担うビジュアルスクリプティングシステムである。プログラミングの専門知識がないアーティストでも、ノードを繋ぎ合わせることで、オブジェクトの振る舞いやワールドのロジック、ユーザーとのインタラクションなどを設計できる。これにより、鑑賞者の動きに反応するアート作品、時間経過と共に変化するインスタレーション、あるいは小規模なゲーム的要素を持つアートなど、従来は専門的なプログラマーの協力が必要だった高度なインタラクティブ表現を、アーティスト自身の手で実現する道が開かれる。ProtoFluxは、アート作品に新たな次元の参加性とダイナミズムをもたらすための強力なツールとなる。
E. 多様な外部アセットの容易な統合
Resoniteは、FBX、OBJ、GLBといった標準的な3Dモデルファイル形式のインポートをサポートしており、アーティストは外部のモデリングツールで作成したアセットをドラッグ&ドロップという簡単な操作でワールド内に取り込むことができる。これにより、クリエイターは自身の得意なツールや既存のアセットライブラリをResoniteの制作環境にスムーズに統合し、効率的に作品制作を進めることが可能となる。このオープンなアセット取り込みポリシーは、Resoniteエコシステム全体の多様性と豊かさを促進する上でも重要である。
F. 外部連携機能による表現の拡張
Resoniteは、プラットフォーム内部の機能に留まらず、外部サービスとの連携によって表現の幅を広げることも可能である。HTTPのGETリクエストやPOSTリクエスト、WebSocket通信に対応しており、これらを活用することでYouTubeやニコニコ動画といった外部の動画コンテンツをワールド内で共有・再生することができる。さらに、ProtoFluxは外部アプリケーションやオンラインサービスとの通信にも対応しており、Twitchとの連携や、Mastodon、Blueskyといった分散型SNSとのユーザー製連携機能などが報告されている。これらの外部連携機能は、アート作品がリアルタイムの外部情報を参照したり、他のプラットフォームのコンテンツを取り込んだり、あるいは作品自体が外部に情報を発信したりといった、より広範で動的な表現を可能にする。
V. クリエイターにとってのデメリットと課題
Resoniteは多くの魅力的な機能を提供する一方で、アートクリエイターが利用する上で直面し得るデメリットや課題も存在する。これらを認識することは、プラットフォーム選択や学習計画において重要となる。
A. 学習コストと技術的ハードル
Resoniteが提供する高い自由度と多機能性は、裏を返せば習得すべき事柄が多いことを意味する。特に、ProtoFluxを用いた複雑なインタラクションやロジックの構築は、ビジュアルスクリプティングとはいえ、一定の学習時間を要する。ノードの数が膨大になると管理が困難になる可能性も指摘されている。また、プラットフォーム全体の操作系や概念に慣れるまでにも時間が必要であり、一部のユーザーは基本的なチャット機能やアバターカスタマイズツールの使い方ですら、習得に時間を要したと報告している。この学習曲線は、特にVR開発やノードベースのロジック構築に馴染みのないアーティストにとっては、参入障壁となり得る。
B. パフォーマンスの最適化要求
VR環境では、快適な体験を提供するために高いフレームレートの維持が不可欠である。Resoniteで制作されるコンテンツ、特に複雑なジオメトリ、多数のオブジェクト、高度なスクリプトを含むワールドやアバターは、パフォーマンスに影響を与える可能性がある。アーティストは、自身の創造性を追求すると同時に、作品が他者にとってもスムーズに体験できるよう、ポリゴン数、テクスチャサイズ、スクリプトの処理負荷などを考慮した最適化を行う必要がある。これは専門的な知識や技術を要する場合があり、クリエイティブな作業に加えて追加的な負担となる可能性がある。プラットフォーム側でもパフォーマンス最適化は継続的な課題として認識されており、改善が進められている。
C. ドキュメントや学習リソースの充実度
ResoniteはNeosVRから派生した比較的新しいプラットフォームであり、その急速な進化に伴い、公式ドキュメントや体系的な学習リソースが、より成熟した開発ツールと比較して十分に整備されていない可能性がある。特にProtoFluxのような高度な機能や、特定のテクニックに関する詳細な情報は不足している場合がある。ユーザーコミュニティによるWiki(例:Resonite Wiki、Resonite日本語Wiki )やチュートリアル動画などが重要な情報源となっているが、情報の網羅性や最新性にはばらつきが見られる可能性がある。この状況は、クリエイターが新しい技術を習得する際に、自己解決能力やコミュニティへの積極的な参加をより一層求めることになる。
D. カスタムシェーダーの未対応(現状)
現時点において、Resoniteはユーザーが独自に作成したカスタムシェーダーを直接インポートして使用することをサポートしていない。これは、独自の視覚スタイルや高度なレンダリング効果を追求したいアーティストにとって、大きな制約となる。既存のシェーダーの組み合わせやProtoFluxによる制御である程度の表現は可能であるものの、シェーダーレベルでの完全なコントロールができないことは、表現の幅を狭める要因となり得る。この機能は将来的なレンダリングエンジンの刷新後に計画されているが、それまでは代替手段に頼らざるを得ない。
E. 経済圏の未成熟と収益化の課題
Resoniteを含むソーシャルVRプラットフォーム全体のクリエイターエコノミーは、まだ発展途上にあると言える。Resonite内でクリエイターが直接作品を販売し、収益を得るための公式なマーケットプレイス機能は現状では限定的である。多くのクリエイターは、BOOTHのような外部プラットフォームを利用してアバターやアイテムを販売しているのが実情である。Resonite自体の収益モデルは、ユーザー向けのクラウドストレージ容量に応じた月額課金や、商用利用向けのライセンス料が中心となっている。年間収入が10万円程度のユーザーが多数派であるという調査結果もあり、Resoniteでの創作活動のみで生計を立てることは現状では困難である可能性が高い。この経済圏の未成熟さは、プロのアーティストがResoniteを主要な活動の場として選択する上での懸念材料となり得る。
VI. Resoniteにおけるクリエイターエコシステム
Resoniteは単なるツールではなく、クリエイターが集い、学び、作品を共有し、そして潜在的には収益を得るためのエコシステムを形成しつつある。
A. コミュニティとサポート
Resoniteのクリエイターエコシステムの重要な柱は、活発なユーザーコミュニティとそのサポート体制である。公式Discordサーバーは、情報交換、質疑応答、開発者とのコミュニケーションのハブとして機能している。また、有志によるResonite WikiやResonite日本語Wikiといったナレッジベースが構築されており、チュートリアルや技術情報が共有されている。特にResonite Japanのような地域コミュニティでは、日本語での質問対応や対面でのヘルプも提供されており、初心者クリエイターの参入を支援している。
さらに、UniFestaのような展示イベントや、Creator Jamのような共同制作イベントは、クリエイター同士の交流を促進し、新たなコラボレーションや学びの機会を生み出している。プラットフォーム内には「メンター」と呼ばれる、運営に公認された案内人も存在し、新規ユーザーのサポートを行っている。このような多層的なコミュニティサポートは、特に学習リソースが発展途上である現状において、クリエイターが技術を習得し、創作活動を継続していく上で不可欠な役割を果たしている。
B. 作品の共有と展示
制作されたアート作品を他者と共有し、展示する機能もResoniteエコシステムの重要な要素である。ユーザーは作成したアイテムやアバターを自身のインベントリに保存し、いつでもどこでもスポーン(出現)させることができる。これにより、フレンドとの間で手軽に作品を見せ合ったり、共同でワールドを構築したりすることが可能になる。
完成したワールドは「ワールドオーブ」として取り出し、メタデータを設定した上でパブリッシュ(公開)することができる。公開されたワールドは、他のユーザーが自由に訪れ、体験することが可能となる。前述のUniFestaのようなイベントは、これらの共有・展示機能を活用し、クリエイターが自身の作品をより広範なオーディエンスに届けるための組織的な機会を提供している。
C. 収益化の選択肢と現状
Resoniteにおけるクリエイターの収益化は、主にプラットフォーム外部の手段に依存しているのが現状である。
- プラットフォーム自体の収益モデル: Resoniteは基本無料で利用可能だが、より多くのクラウドストレージ容量(アバター、アイテム、ワールドなどの保存用)やグループ機能、ヘッドレスサーバーソフトウェアへのアクセス権などを求めるユーザー向けに、月額制の有料プラン(Explorer, Trailblazer, Builderなど)を提供している24。また、年間10万ドル以上の収益が見込まれる企業向けには商用利用ライセンスが用意されている。これらはプラットフォーム運営側の収益モデルであり、クリエイターが直接的に収益分配を受けるものではない。
- クリエイターによる収益化:
- 外部プラットフォームでの販売: 現在、Resoniteクリエイターが作品(アバター、アイテム、ツールなど)を販売する主要な方法は、BOOTHやGumroadといった外部のデジタルコンテンツ販売プラットフォームを利用することである。Resoniteには「Resonite Package」というエクスポート機能があり、これによりアイテムやアバターをファイルとして出力し、これらの外部サイトで販売することが可能になっている。この方法は、特にアバターやアクセサリーの販売で活用されている。
- Patreon等を通じた支援: Resonite開発チーム自身がPatreonを通じて開発資金の支援を募っているが、個々のクリエイターが自身の活動に対してPatreon等で支援を募ることも考えられる。ただし、これは作品販売とは異なるモデルである。
- コミッション(制作依頼): ワールド制作やアバターカスタマイズなどのスキルを持つクリエイターが、他のユーザーから個別に依頼を受けて制作し、対価を得るという形態も考えられるが、プラットフォーム内に体系的なコミッション市場があるわけではない。
現状では、Resoniteプラットフォーム内にクリエイターが直接作品を販売し収益を得るための統合されたマーケットプレイスやシステムは十分に整備されておらず、クリエイターエコノミーはまだ小規模であるとの指摘もある。収益化を目指すクリエイターは、外部ツールやプラットフォームとの連携、あるいは独自のビジネスモデルを構築する必要がある。
D. 知的財産権の取り扱い
Resoniteのようなユーザー生成コンテンツ(UGC)プラットフォームにおいて、知的財産権(IP)の取り扱いはクリエイターにとって極めて重要な関心事である。Resoniteの利用許諾契約(EULA)によれば、ユーザーがプラットフォーム内で作成または投稿したコンテンツ(Contributions)の所有権は、基本的にユーザー自身に帰属する。
しかし、ユーザーは自身のコンテンツを投稿することにより、Resonite運営(Licensor)およびプラットフォーム、他のユーザーに対し、そのコンテンツをResoniteプラットフォームが意図する範囲で使用するためのライセンスを自動的に許諾することになる。このライセンスは、現在知られている、あるいは将来開発されるあらゆる形式、メディア、技術に適用され、ユーザーの名前、会社名、提供した商標などの使用も含まれる。
クリエイターは、自身のコンテンツが第三者の著作権、特許権、商標権、企業秘密、著作者人格権などを侵害しないことを保証する責任を負う。また、自身がコンテンツの作成者であるか、あるいは必要なライセンスや権利、同意を得ている必要がある。Resonite運営は、投稿されたコンテンツを編集、再分類、事前審査、削除する権利を単独かつ絶対的な裁量で有するが、コンテンツに対する所有権を主張することはない。
このIPポリシーは、UGCプラットフォームとしては標準的なものだが、クリエイターは自身の権利と責任を正確に理解し、特に他者のIPを利用する際には細心の注意を払う必要がある。コラボレーションを行う際にも、各々の貢献範囲や権利の所在について明確な合意を形成することが望ましい。
VII. 他の創作ツールとの比較
Resoniteをアート制作ツールとして評価する上で、既存の主要なVRプラットフォームやゲームエンジンとの比較は不可避である。ここでは、特にVRChat(Unity SDK使用)およびUnity単体との比較を行う。
A. Resonite vs. VRChat (Unity SDK)
ResoniteとVRChatは、共にソーシャルVRプラットフォームとして多くのユーザーを抱えるが、コンテンツ制作のワークフローや思想において顕著な違いが見られる。
- 制作ワークフロー: VRChatでのアバターやワールド制作は、主にUnityゲームエンジンとVRChat SDKを用いて行われ、Unityエディタ内での作業が中心となる。完成したコンテンツはビルドされ、VRChatプラットフォームにアップロードされる。一方、ResoniteはVR空間内でのリアルタイム制作・編集を重視しており、FBXファイルなどを直接インポートし、Resonite内でセットアップやギミックの実装を行うことができる。これにより、Unityを起動する手間が省け、より迅速で直感的なイテレーションが可能となる。
- スクリプティング: VRChatでは、インタラクティブな要素の実装にUdonというビジュアルスクリプティングシステム(またはUdonSharpというC#ライクな言語)が用いられるが、これもUnityエディタ内で作業する。対してResoniteのProtoFluxは、VR空間内でノードを直接操作してロジックを構築できるため、より没入的で実験的な開発体験を提供する。
- アセット管理と共有: Resoniteのインベントリシステムは、オブジェクトやツールをアイテムとして保存し、異なるワールド間で容易に持ち運び、スポーンさせることができる1。VRChatにもアバターやワールドの保存機能はあるが、Resoniteのシステムはより汎用的で柔軟なアセット管理を志向しているように見受けられる。
- エコシステム: VRChatは長年の歴史の中で、アバターやアセットの巨大なコミュニティマーケット(例:BOOTHでの販売)を形成しており、クリエイターが制作した高品質なアセットが豊富に流通している。Resoniteは比較的新しいプラットフォームであり、このようなエコシステムの成熟度はVRChatに及ばない可能性がある。
総じて、ResoniteはVR内での直接的かつリアルタイムな制作体験と高い自由度を追求する一方、VRChatはUnityという汎用エンジンを基盤とした、より確立されたエコシステムと広範なユーザーベースを持つ。アーティストにとっては、制作スタイルの好みや求める機能、コミュニティの性質によって、どちらのプラットフォームが適しているかが異なるだろう。
B. Resonite vs. Unity (for VR Art Creation)
Unityは汎用ゲームエンジンであり、VRコンテンツ開発の業界標準の一つであるが、Resoniteとはその根本的なパラダイムが異なる。
- 基本思想: Resoniteは、VR体験とコンテンツ制作が統合された「メタバースプラットフォーム」である。一方、UnityはVRを含む多様なインタラクティブコンテンツを開発するための「エンジン(道具)」である。
- 制作フロー: ResoniteはVR空間内でのリアルタイムかつ複数人での共同制作を核とする。アーティストは空間内で直接オブジェクトを操作し、その場で結果を確認しながら作品を構築できる。Unityを用いたVRアート制作は、通常デスクトップ環境でのシーン構築、プログラミング、アセット調整が先行し、その後VRデバイスでビルド・テストするという、より伝統的な開発サイクルを辿る。
- アクセシビリティ: Resoniteは、ProtoFluxのようなビジュアルツールを通じて、プログラミング経験の浅いアーティストでもインタラクティブな作品を制作できるよう、参入障壁を低くすることを目指している。UnityもBoltやPlayMakerといったビジュアルスクリプティングツールを提供するが、エンジン自体の多機能性ゆえに学習曲線は一般的にResoniteより急峻である。
- 機能の深度と柔軟性: Unityは汎用エンジンとして、レンダリング、シェーダー、物理演算、アニメーション、AIなど、あらゆる側面で極めて高度かつ詳細なカスタマイズが可能であり、大規模で最適化されたプロジェクトにも対応できる。Resoniteも強力な機能を備えるが、特にカスタムシェーダーのサポートなど、一部の高度な機能ではUnityに及ばない点がある(現状)。
ResoniteはVRネイティブな創作体験の即時性と直感性を、Unityは汎用エンジンの圧倒的なパワーと柔軟性を提供する。小規模なチームや個人アーティストが迅速にアイデアを形にし、インタラクティブなVRアートを模索するにはResoniteが、一方で極めて高度なビジュアル表現や複雑なシステム、大規模プロジェクトを追求する場合にはUnityが、それぞれ強みを発揮すると考えられる。
C. 表:アート制作における機能とワークフローの比較
Resonite、VRChat(Unity SDK使用)、およびUnity(VRアート制作用)の主要な特徴とワークフローを以下の表にまとめる。この表は、特にVRChatやUnityに慣れ親しんだクリエイターが、Resoniteの独自の位置づけ、強み、そして現在のトレードオフを迅速に理解するための一助となることを目的とする。
特徴 | Resonite | VRChat (Unity SDK使用) | Unity (VRアート制作用) |
主要な制作モード | VR内、リアルタイム | 主にUnity (デスクトップ)、その後VR内テスト | 主にデスクトップ、その後VRへデプロイ/テスト |
オブジェクト/ワールド構築 | VR内での直接操作、ProtoFluxスクリプティング | Unityシーン構築、Udon/SDKコンポーネント | モデリング、シーンアセンブリ、C#スクリプティングなどエンジンの全機能 |
アセットインポート | FBX, OBJ, GLB等をドラッグ&ドロップ | Unity Editor経由 (FBX等) | 多様なフォーマットに対応する堅牢なインポートパイプライン |
スクリプティング/ロジック | ProtoFlux (VR内ビジュアルノード) | Udon (UnityビジュアルノードまたはUdonSharp) | C#, Bolt/PlayMaker (ビジュアルスクリプティング) |
リアルタイム共同制作 | 強力、複数ユーザーによるVR内制作 | 限定的 (ワールド構築はUnity内でソロ作業) | プラグイン (Unity Collab等)で可能だが、VRアートワークフローの核ではない |
基本的なアートセットアップの容易さ | VR中心タスクでは比較的容易な可能性 | Unityへの習熟が必要 | エンジンの基本操作の学習曲線が急 |
高度なビジュアル (シェーダー) | カスタムシェーダー制限あり (アップデート待ち) | Unityの全シェーダー機能 (Shader Graph, カスタムコード) | エンジンの全シェーダー機能 |
クリエイター収益化 (アセット) | 外部 (例: BOOTH経由のResonite Package) | 外部 (例: BOOTHでのアバター/アセット販売) | N/A (エンジンでありマーケットプレイスではない) / Asset Store販売 (ツール/アセット) |
プラットフォームの焦点 | ソーシャルVR、ユーザー生成コンテンツ&体験 | ソーシャルVR、ユーザー生成アバター&ワールド | 一般的なゲーム/インタラクティブ体験開発 |
この比較表は、各プラットフォームが提供する制作環境の特性を浮き彫りにする。Resoniteは、VR空間内での直接的かつ共同的な創造体験に特化しており、アイデアの即時的な具現化とイテレーションを重視するアーティストに適していると言える。一方で、VRChatはUnityを介することで広範なカスタマイズ性と成熟したエコシステムへのアクセスを提供し、Unity単体では比類なき汎用性とエンジンレベルでの深いコントロールを可能にする。アーティストは自身のスキルセット、プロジェクトの要求、そして望む制作体験に基づいて、これらのツールを選択または組み合わせて利用することになるだろう。
VIII. 将来性と展望
Resoniteは活発に開発が続けられているプラットフォームであり、その将来性には大きな期待が寄せられている。特にアートクリエイターにとって、今後の進化は創作活動の可能性を左右する重要な要素となる。
A. 開発ロードマップと期待される機能強化
Resoniteの正式な詳細ロードマップは常に公開されているわけではないものの、開発チームはコミュニティからのフィードバックを重視し、主要な開発目標を定期的に共有している。最近の焦点としては、パフォーマンスの最適化、設定システムおよびUIの再構築、新しい社内製IK(インバースキネマティクス)システムの実装などが挙げられている。これらの改善は、より快適で安定した制作環境と、より自然なアバター表現に繋がるため、アートクリエイターにとっても恩恵が大きい。
特にアーティストの関心が高い機能として、カスタムシェーダーのサポートがある。これは現在、プラットフォームのレンダリングエンジンがカスタムソリューションに置き換えられた後に計画されており、実現すればビジュアル表現の自由度が飛躍的に向上するだろう。また、ProtoFluxの機能拡張や、新たなアート制作ツールの追加なども継続的に期待されるところである。コミュニティの要望が開発に影響を与えることも示唆されており、ユーザーと開発者が一体となってプラットフォームを進化させていく姿勢が見て取れる。
B. アートクリエイターにとってのResoniteの進化の方向性
Resoniteの進化は、アートクリエイターに対してより直感的で、より表現力豊かで、より共同作業に適した環境を提供することを目指していると考えられる。パフォーマンスの向上は、より複雑で大規模なアート作品の実現を可能にし、UIの改善は学習コストの低減と作業効率の向上に寄与するだろう。
長期的な視点では、ResoniteのリードデベロッパーであるFrooxius氏が構想する「シングルシャードの仮想世界グリッド」というビジョンが注目される。これは、個々のセッション(ワールド)がシームレスに、あるいは任意の配置で相互接続され、さらには相対的に移動さえ可能な、無限に広がる連続的な仮想空間を目指すものである。このような構造が実現すれば、惑星や太陽系、銀河系といった広大なスケールのワールドアートや、ワールド間を移動する宇宙船内部のセッションなど、従来のグリッド型メタバースでは困難だった表現が可能になる。これはアート作品のスケール感や物語性に新たな地平を開く可能性を秘めている。
C. メタバースにおけるアート表現の新たな地平
Resoniteは、その設計思想と機能セットにより、メタバースにおけるアート表現のあり方を再定義する可能性を秘めている。ユーザーがコンテンツを創造し、それをリアルタイムで他者と共有・体験できるという、制作と体験のサイクルが密接に統合された環境は、アーティストにとってこれまでにない直感的で没入的な創作プロセスを提供する。
ProtoFluxによるインタラクティビティの容易な実装は、鑑賞者が単に「見る」だけでなく、作品と「関わり」、作品の一部となるような体験型アートの普及を加速させるだろう。また、リアルタイム・コラボレーション機能は、地理的な制約を超えたアーティスト間の共同制作を促進し、多様な才能の融合から生まれる新たなアートフォームの出現を予感させる。
Resoniteが目指す、ユーザー主導で進化し続けるボトムアップ型のエコシステムは、アートが単に展示される対象ではなく、コミュニティによって共に育まれ、変化し続ける生きたメディアとなる未来を示唆している。このプラットフォームは、アーティストがデジタル空間の可能性を最大限に引き出し、次世代の芸術表現を切り拓くための実験場となり得るだろう。
IX. まとめと提言
本レポートでは、Resoniteをアート作品のクリエイターのためのツールとして多角的に考察してきた。その機能、活用事例、メリット・デメリット、そして将来性を踏まえ、以下に総括とアーティストへの提言を述べる。
A. Resoniteのアーティスト向け価値提案の要約
Resoniteがアートクリエイターに提供する中核的な価値は、その比類なき自由度、VR空間内でのリアルタイムかつ直感的な制作ワークフロー、そして強力な共同編集機能にある。ビジュアルスクリプティングシステムであるProtoFluxは、プログラミングの専門知識がないアーティストでも、作品に複雑なインタラクティビティや動的な振る舞いを組み込むことを可能にし、表現の幅を大きく広げる。外部アセットの容易な統合や、外部サービスとの連携機能も、創造性を刺激する要素となる。Resoniteは、制作と体験が深く結びついた環境を提供し、アーティストがアイデアを迅速に具現化し、試行錯誤を繰り返しながら作品を磨き上げるプロセスを支援する。
B. フロンティアを航海するアーティストへの提言
Resoniteという新たなフロンティアに乗り出すアーティストに向けて、以下のような指針を提言する。
- 探求者・実験者へ: Resoniteの直感的なビルドツールと自由な環境は、アイデアのラピッドプロトタイピングや空間的なスケッチに最適である。無料ティアでも十分な探求が可能なので、まずは飛び込んでその可能性を体感してほしい。
- インタラクティブアーティストへ: ProtoFluxの習得に時間を投資することを推奨する。コミュニティが提供するチュートリアルやサンプルから始め、徐々に複雑なシステム構築に挑戦するとよい。他者とのコラボレーションは学習を加速させるだろう。
- ワールドビルダー・環境アーティストへ: VR内での直接的な空間操作とアセットインポートの容易さを最大限に活用すべきである。ただし、大規模で複雑なシーンを制作する際には、パフォーマンス最適化への意識が不可欠となる。
- アバターアーティストへ: FBXのダイレクトインポートやワールド内でのカスタマイズ機能を活用し、個性的なアバター表現を追求できる。IKシステムのアップデートやコミュニティのベストプラクティスには常に注意を払うとよい。
- 全てのアーティストへ:
- Resoniteのコミュニティ(公式Discord、Wiki、イベントなど)に積極的に参加し、情報交換、学習、コラボレーションの機会を見つけることが成功の鍵となる。
- プラットフォームのパフォーマンス改善、UIの更新、そして待望のカスタムシェーダー機能など、開発の進捗を注視し続けることが重要である。
- Resoniteは強力なツールであると同時に、まだ発展途上の側面も持つ「アーリーアダプター向け」のプラットフォームであることを理解し、ドキュメントの不足や時折の不安定さも許容する心構えが必要となるだろう。
C. 響き合うバーチャル空間におけるアートの未来
Resoniteは、単なるVRプラットフォームや創作ツールに留まらず、デジタル時代の新たなアート表現と体験のあり方を模索するための壮大な実験場であると言える。その野心的なビジョン、特にシームレスに相互接続された広大な仮想世界の構想や、継続的なクリエイティブツールの強化が実現へと向かうならば、Resoniteはバーチャルリアリティにおけるアートの創造と享受の風景を一変させる可能性を秘めている。
このプラットフォームにおいて、アーティストは単なるコンテンツ供給者ではなく、この新たなデジタルユニバースの文化、美学、そして体験そのものを形作る能動的な主体となる。Resonite(共振する)という名が示すように、クリエイター同士、クリエイターと鑑賞者、そして現実と仮想が響き合う中で、かつて想像もできなかったようなアートの未来が紡ぎ出されていくことを期待したい。